東京JAZZ 2008 (2008-20.21.22.23)

〜以下は雑誌「ADLIB」11月号に掲載したもの〜

 今年で7回目となる「東京JAZZ 2008」。今年は「GRAMORUOS」をテーマに、8月末の3日間、有楽町の国際フォーラムで盛大に開催された。駆け足で公演の様子を追いかけてみよう。
 開幕は29日の夜。日仏交流150年を記念したイベント「フレンチ・ジャズ・クォーター」の出演者たちがスターターをつとめ、続いて日野皓正クインテットがアグレッシブな演奏を展開する。一転、ぐっと落ち着いたたたずまいのロン・カーター。さすがにヴァーチュオーゾの腕前を披露してくれる。
 初日のラストはデビッド・サンボーン。日本ではおなじみの彼の演奏も快調に走る。マーカス・ミラーとの諸作はもちろんだが、アート・ペッパーのナンバーなど、近作に見られるようなスタンダードな香が漂うプレイだ。
 翌30日、あいにくの雨模様だが、湿気を吹き飛ばすようなジャミン・ゼブのコーラスで始まり、上原ひろみ(p)とタップダンサー熊谷和徳の異色のセットが続く。ガーシュインの<ラプソティ・イン・ブルー>を力いっぱい奏でる上原と、そのサウンドによりそうように、そしてときに戦いを挑むようにタップを踏む熊谷。会場中がその迫力に我を忘れ、演奏終了直後から拍手が鳴り止まない。
 さらに2006年に続いて登場のハンク・ジョーンズ率いるグレート・ジャズ・トリオ。NHK交響楽団とのジョイントでもスケールの大きなジャズを聞かせてくれた。
 夜は再び上原ひろみ率いるHIROMI’S SONICBLOOMから。パワフルでエネルギッシュな上原のプレイはここでも全開だ。アンコールの声が鳴り止まなかったのが印象的。
 この夜はリシャール・ガリアーノミシェル・カミロの2グループも、それぞれ個性的な演奏を聞かせてくれた。
 最終日はガラリと雰囲気が変わり、R&Bの大物たちが登場。まずはロベン・フォードの手堅い演奏から。そしてミスター・ソウルシンガーともいうべきサム・ムーアの登場だ。この日も年齢を感じさせない余裕のステージでヒット曲の数々を熱唱した。
 今回の目玉ともいえるのが次に登場のスライ&ファミリーストーンだろう。ファンクの創始者の奇跡の来日である。スライも当日はステージ上に出ずっぱりで、あまたあるヒット曲を披露し、聴衆を陶酔状態へといざなう。<サンキュー>のイントロのベースがうなった瞬間、世界が変わった。
 夜はジョージ・ベンソンのステージから。ヒット曲の多いアーティストだけあって、会場はいい感じに暖まり、ラストの<ギブ・ミー・ザ・ナイト><オン・ブロードウェイ>ではディスコ状態に。
 トリを飾るのはフォープレイ。名手4人の超絶技巧に酔いしれ、さらにネイザン・イースト(b)のシブいボーカルも楽しめた。
 そして最後にフォープレイとデビッド・サンボーンが合体し、さらにオーラスはサム・ムーアが再び登場。するとネイザンがジャコ・パストリアス風のフレーズを弾きだす。ジャコの1stに収められていた<カム・オン・カム・オーバー>だ。そうだ、そういえばあの曲はサムが歌っていたんだっけ、と思い出し納得。
 東京が世界のジャズのひとつの大きな拠点であることをしっかりと見せ付けてくれた素晴らしいフェスティバル。終わったばかりだが、来年が今から楽しみである。
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