お行儀

 なんだか最近文句ばかり書いているが……。
 昨夜は東京フォトの内覧会に顔を出してから横浜に戻り、野毛のとあるバーに入る。初めての店だがマスターとはちょっとだけ顔見知りである。オーソドックスなカウンターバーで、落ち着いた雰囲気。静かな店内には女性客がひとりだけ。この女性、年のころなら20代半ばというところか。カウンターのスツールの上にアグラをかくような形で座っていたが、オレが入店するとあわてて脚を降ろした。こういうタイプのバーではいささか行儀が悪いと思ったが、常連なんだろうし、初めて入ったオレがどーのこーのいうことじゃない。
 マスターと話が弾み、またくだんの女性も話好きと見えて、3人で野毛界隈の飲み屋の話題で盛り上がった。女性客はこの近所に引っ越してきてまだ1年ほどということで、あっちこっち飲み歩いて店を開拓しているという。酒もかなりイケる口のようだ。野毛にある有名店で彼女がまだ行っていない店の話題になり、そのうち何軒かはオレはすでにチェック済み、というかよく行く店もある。特にナンパという意識はなく「今度機会があったら一緒に行きましょうか」という流れになった。
 「眠くなった」という彼女は先に店を出たが、帰り際にはあっさりと連絡先も教えてもらい、近いうちにどこかに誘おうと思いながら、もう少し飲んでいるうちにマスターとの会話がさらに弾み、時刻はすでに午前3時をまわった。
 さすがに酔っ払ったのでそのバーを出たが、帰宅までの途中で悪いクセがでて、もう一軒顔を出そうという気になる。というのも、さっきの女性が「『A』は有名な店だけどまだ行ったことがない。よかったらゼヒ連れて行って欲しい」と言っていた「A」がすぐそばにあり、そこは朝までやっているので、彼女を連れて行く準備運動でもしておこうと思ったのだ。
 初めて入るには少々勇気がいるような雰囲気の「A」だが、もう何度も行って店主とも顔なじみになっている。よし、今度はあの娘を連れて美味い酒を呑もう、なんて鼻の下を伸ばしながら暖簾をくぐり、戸を開けたら……あれれ?
 L字型になったカウンターの一番奥にさっきの女性がいた。隣には男性がいて、かなり楽しげに談笑している。オレはカウンターの反対側に座り(実際、そこしか空いていなかったのだ)チラチラと見ていたら、むこうも気づいて驚いた顔を一瞬したが、すぐに隣の男性との会話に戻って、しばらくすると二人で店を出て行った。そのときにもオレのほうをチラとも見なかった(と思うがよくわからん。なんせ酔ってた)。その後複雑な気持ちを抱えたままひとりで呑み続け大泥酔してしまったよ。
 お行儀の悪い人というのは、どこにいってもお行儀が悪いという教訓を得ました。
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