あんた誰?

ガチョーン伝説

ガチョーン伝説

 1980年代の後半、オレは都内某所にアパートを借りて住んでいた。その部屋に引いた電話には留守番電話機能が付いていた。携帯電話などない時代のことで、留守電は編集者という仕事上必須だった。
 そして、その応答メッセージでよく遊んでいた。購入したのが初夏だったのでキャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」冒頭のフレーズを入れてから自分の応答の言葉を録音したり、それを秋にはマイルス・ディビスの「枯葉」にしたり。
 でも最強アイテムはクレージーキャッツ
 電話がかかってきて相手が最初に聞くセリフがいきなり「サラリーマンはぁ〜、気楽な家業ときたもんだ!」とか、あのスーダラ節のおまぬけなイントロだったりして、一部に好評、多くは不評という状況だったけど、オレは面白がっていた。
 その最強の中でも、もうまったくもってサイコーだったのが谷啓が歌う「あんた誰?」だ。
 イントロなしで曲の頭にいきなり「びろ〜ん、あんた誰?」というセリフが入る。これを留守電に入れて喜んでいた。
 あるとき、担当していた小説家のセンセイが、普段は会社にしかかけてこないのに、たまたま急な用事があるとかで自宅に電話をかけてきた。運悪くオレは外出中で、そのセンセイに「びろ〜ん」を聞かせるハメになってしまった。
 後日飲んだとき、大笑いしてくれて事なきを得たのだが、その後母親がやはり「びろ〜ん」の洗礼を受け、「いい大人がみっともない!」と激怒され(当時は20代後半でした)まぁそうかもしれないな、と思いやめた。
 植木等のライブに飛び入りでハナ肇谷啓が乱入したステージを目の当たりにして、狂喜乱舞したのもその当時のこと。
 谷啓の訃報にに接しまさに「がちょ〜ん」です。↑の3人は誰もいなくなっちゃった……御冥福をお祈りいたします。
谷啓

谷啓

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