テッサー(Tessar))
テッサーといってもフグの刺身のことではない。レンズの話だ。久しぶりにカメラの話題。
レンズには固有の名前がある
カール・ツァイス(Carl Zeiss)という名前を聞いたことがあるだろうか? 1846年*1に創立されたドイツの名門光学メーカーで、その歴史の深さと性能の高さは他の追従を許さない、プロアマ問わずカメラマニア垂涎のブランドである。戦前から1970年代まではコンタックスなどの名前でカメラ本体も製造していたが*2、現在はカメラ用レンズや顕微鏡などの光学機器の会社である*3。とにかくカール・ツァイスからはたくさんの名レンズが産み出されてきたわけだ。
ところで、レンズには名前があるのを御存知だろうか? 名前といっても会社名や、50mm f1.4などの性能を表わす数値ではなく、レンズそのもに固有名があるっていうこと。ニコンは「ニッコール」、ミノルタは「ロッコール」、オリンパスは「ズイコー」、古いペンタックスは「タクマー」と、日本のレンズはラインナップ全体に名前がついていることが多い。「Nikkor 28mm f2.8」なんていう風に呼ぶわけだ。キヤノンは昔「セレナー」といってた時期もあるが一眼レフ用はアルファベットのみで「FD」とか「EF」。
ところが海外のメーカーはレンズごとに名前がついていることが多い。ライカ用のレンズにはエルマー、ズマロン、ズミルクス、なんてのが有名だし、珍品として高価に取引されているのにはタンバールとかノクチルクスなんてのもある。これらは焦点距離や口径比(明るさ)などの性能的なことを表わしている場合もあるが、どちらかというとレンズの構成を示す名称なのだ*4。
例えばエルマーといえば4枚のレンズを使い、そのうち2枚が貼り合わせてある3群4枚のレンズ構成のこと。35mmや50mm、90mmなどがあり、f値も3.5だったり2.8だったり。
そんな風にレンズに名前をつけ始めたのって誰だか知らないけど、やっぱツァイスが最初なのかなぁ。
薄くて軽量小型がお気に入り
とゆーことで、テッサーである。ツァイスのレンズにもプラナーとかゾナーとかディスタゴンとかいろんな名前があるんだけど、1902年に名設計者パウル・ルドルフにより世に出たのが、テッサーというわけ。このレンズの構成は先に述べたライカのエルマーと一緒の3群4枚構成。というよりも、エルマーがテッサーを真似たわけで、この3群4枚構成のレンズを総じて「テッサータイプ」と呼ぶ。このレンズのいいところは、ツァイスのレンズにしては安いところ(笑)。だって、ライカやツァイスのレンズって「えっ!」って驚くくらい高いんだもん。桁がひとつ違う。そんな中、このテッサー(ライカのエルマーも)は構成が単純なせいか、比較的お安く手に入る。
さらにオレが所有するこれは、ツァイスの名前を冠してあるけどMade in Japan 。しかも中古だからめっぽう安かった(1万円台半ば)。1970年代、カメラ本体の製造をやめたツァイスと、日本の中堅カメラメーカーのヤシカが提携してコンタックスブランドを復活させた。その後ヤシカは京セラに吸収され、京セラからコンタックスのカメラは出続けた*5。ボディは日本製、レンズはドイツのツァイス製というのが当時の体勢で、カメラもレンズもとにかくめったやたらに高額だった。しかし一部のレンズは日本で作られていて、これは少し安かったのだ。そしてオレのレンズもそれである。
性能的にはどうなんだろ? あんまり専門的なことはよくわからんが、キリっとシャープに写る(気がする)。それよか特筆すべきなのはその薄さ、軽さ。レンズ構成が単純なだけに、このテッサータイプのレンズは薄っぺたいのが多い。俗にいう「パンケーキ」レンズである。小ぶりなボディと組み合わせると一眼レフとは思えないようなコンパクトさ。
オレの今のお気に入りは、ヤシカのボディにオレンジフィルターつけたテッサーを装着して、モノクロでパシャパシャすることなのだ。
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