PLAYBOY 2007年9月号

PLAYBOY (プレイボーイ) 日本版 2007年 09月号 [雑誌]

PLAYBOY (プレイボーイ) 日本版 2007年 09月号 [雑誌]

 一部で話題を集めている今月号、巻頭特集が「ブラック・ミュージックの魂 The Soul of Black Music」である。目次を見てみると

  1. ブルーズに取り憑かれた男たち(大友博)
  2. スペシャルインタビュー「ナイル・ロジャース×ピーター・バラカン
  3. ソウル・ミュージックが生まれた時(中山義雄)
  4. JB死すともファンクは死なず(出田圭)
  5. モッズが愛したモータウン大鷹俊一
  6. ヒップホップの市場原理(印南敦史)

 あとコラムで日本のアーティストが語るブラック・ミュージックの巨匠というくくりで
「鮎川誠が語るロバート・ジョンソンコンプリート・レコーディングス
鈴木雅之が語るマービン・ゲイレッツ・ゲット・イット・オン
「AIが語るティナ・ターナーセレブレイト:ザ・ベスト・オブ・ティナ・ターナー [DVD]
菊地成孔が語るマイケル・ジャクソンスリラー
の4本。総ページ数38。さらに「ピーター・バラカンが選ぶブラック・ミュージックの100枚」が別冊付録として本誌にはさみこまれているという、かなり力の入った企画だ。
 ソウルに限らず、ブルースとヒップホップまでをとりこんだ特集になっているが、ジャズはオミットされている。まぁジャズはそれだけでしょっちゅう特集になってるからね。で、PLAYBOYの読者層からすれば、ド真ん中はディスコ世代のソウル・ミュージックなんだろうけど、そろそろ初期ヒップホップ世代もPLAYBOYを読む年頃になってきたということか。ブルースをとりあげているのはピーター・バラカンの意向かな。
 つい最近と思っていたらもう3年前だったけど、2004年の3月号でもPLAYBOY誌は「ソウル ミュージック大全」という巻頭特集をやっている。スティービー・ワンダーの分析記事をアタマに据えて、モータウンに多くを割き、マービン・ゲイクインシー・ジョーンズをとりあげ、さらに日本最初のソウルバーとしてGeorge’s Storyも掲載されていた。このときは映画『永遠のモータウン』の公開時期ということもあり、こういう構成になったのだろう。
 では今回の特集のフックはなんだろう? グラミーの時期でもないし、『ドリームガールズ』はもう旧聞に属してしまっているし……なんかあったっけ? ナイル・ロジャースのインタビューが取れたから、かな。

4.と6.がおもしろかったよ

1.はニューオリンズを出発してミシシッピデルタ地帯を抜けシカゴまで、ブルースがたどった道のりをトレースするというもの。といっても文章はシカゴまで行かず*1、メンフィスのエルビスにまつわるエピソードから英国へと飛ぶ。最後にたどり着くのはNYのエレクトリック・レディランドだった。
2.はナイルによるCHICの自己分析。「シックはR&Bバンドなんだ」という宣言はおもしろいが、「確かに可能性としてはクリームやトラフィックのような大物との共演を夢見ることだってできるわけだけど、でも実際のところ自分が一緒にライブをやるならコモドアーズやアイズリー・ブラザーズ、ルーファス、オハイオ・プレイヤーズだろうなって自覚しているものさ」というナイルの発言は、彼のよって立つところを示しているように思う。オレの中じゃオハイオやアイズリーのほうがはるかに大物なんだけど(笑)。
3.はアトランティックとスタックスについての解説。
5.は英国のモッズたちとモータウンを中心とした米国産ソウルとのからみについて。
と、ここまで(1.3.5←六本木のラーメン屋だね(笑))は比較的「知ってること」が多い内容。
 おもしろかったのは4.と6.だ。4.はファンクの再定義。6.は現在のヒップホップ・シーンがハマっている陥穽について指摘している*2。どちらもストリート・ミュージックとしてのブラック・ミュージックという視点を基軸にした論で、こういうのオレ好き(笑)。
 付録には推薦盤が解説入りで載っているが、そのあい間に赤坂「MIRACLE」、大久保「STONE」、大阪「MARVIN」、神戸「BOOZE UP BAR」の4軒のソウルバーと「ディスクユニオン」「SAM’S」の2軒のレコードショップの紹介もある。この部分の誌面デザインは某誌にクリソツ、という気もするのだが、まいいか(笑)*3
 全体的に、それぞれのジャンルについて結構突っ込んであるとは思うのだが、1ジャンル1筆者1文章なので、これからソウルやブルースに触れようという人にはちょいと難解な部分もありながら、すでに深くそのジャンルを聞きこんでいる人にとっては少し物足りない、という感じ。つまりPLAYBOYの定期購読者はそれほどブラック・ミュージックに造詣は深くないだろうし、このタイトルを見てこの号だけ買う人は、ま、そういう人だ。その両者を満足させるのは確かに難しいだろうけどね。前回(2004年3月号)のほうがモータウンに絞っていたので突っ込みが効いてて読みごたえがあった。
 ただし、渡辺祐氏も自身のブログで述べているが、写真は上質。これはさすがです。サム・クックが煙(まるでエクトプラズム)吹いてる写真とか、JBの葬儀の写真とか、あと特集アタマのレイとBBの写真なんかステキです。

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*1:文頭でシカゴについて語っている

*2:ZEEBRAも最近はワイドショーの常連だし

*3:てか、写真を細かく見たらその某誌の広告がバッチリ写ってるよ